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アブラハムとイサク

人物

 アブラハム イサクの父。サラの夫。老齢。

 イサク アブラハムとサラの息子。少年。

 サラ アブラハムの夫。イサクの母。老齢。

 天使 主の使い。




 アブラハムの神ヤハウェがソドムとゴモラの町を滅ぼしたのち、神がアブラハムの妻サラの不妊を解き、アブラハムに二人目の息子イサクが産まれてしばらくのこと。アブラハムはエジプトの女奴隷ハガルが自らに産んだ長男のイシュマエルを、その母と共に荒れ野に追放した。というのもアブラハムの妻であるサラが、自分の息子イサクと共にハガルの子イシュマエルまでもが、夫アブラハムの跡継ぎとなることに不満を抱いていたからである。しばらくの時を経て、アブラハムの神ヤハウェは、アブラハムに彼の息子イサクを全焼のささげ物としてささげるよう命令した。これは神がアブラハムの信仰心を試して課した試練であった。翌朝のまだ日が昇らないうちに、アブラハムはろばに鞍をつけると、二人の若い従者を伴って、息子イサクを連れて家を発った。



第一幕 モリヤの地。山麓。


 舞台上手より、薪を担いだイサクと、炭火の入った器および短刀を手にして、荷物を背負ったアブラハム登場。


【イサク】 お父さん。

【アブラハム】 どうしたイサク。

【イサク】 もうくたくたです。脚が思うように動きません。

【アブラハム】 まあな。もう三日も歩き詰めだからな。

【イサク】 お父さんは元気ですね。疲れを知らないようです。

【アブラハム】 そんなことはないよ。この旅の間はうまく眠れなくて、父さんも困ってるんだ。ただ私たちの主を思えばこそ、体も持ちこたえることができてよ。でも、おまえが休みたいというなら、少し休むとしようか。

【イサク】 ありがとうございます。ここまで急いで来ましたからね。荷物を降ろしてもいいですか。 

【アブラハム】 いや、それはやめておこうか。その薪は私たちの主に香を焚くための神聖なものだ。やたらと土の上に置いて、自分の身から放してはいけないだろう。

【イサク】 確かに、そうですね。わかりました。背負っておきます。

【アブラハム】 それにイサク、まだそのくらいの体力は残ってるだろう?

【イサク】 ええ。そのくらいでしたら大丈夫です。ねえ父さん、僕らは今から礼拝を、つまり神様にささげ物をするんですよね。

【アブラハム】 ああ、そうだよ。そのためにここまで来た。

【イサク】 確かに父さんの手には火が、そして僕の背中には薪がありますが、でも焼いてささげる羊は、いったいどこにいるんですか。

【アブラハム】 ふん、なにも心配することはないよ。それはきっと神ご自身が、然るべきときに私たちに与えてくださるだろうから。

【イサク】 そうですか。わかりました。でも急な話ですよね。家を発つ前の晩まで、父さんはなんにも言ってなかったのに、その翌朝になってすぐに出発しようって、そういう次第なんですから。

【アブラハム】 まあ、そうだね。だがこれまでの道中でも話したように、これは主の御意志なんだ。だから一刻も早く実行に移さなければいけない。わかるね?

【イサク】 お母さんには話したんですか。あの日はまだ目を覚まさないうちに出てきてしまいましたが。

【アブラハム】 いや、話していない。

【イサク】 どうしてですか。きっとびっくりしていますよ。

【アブラハム】 うん。それはそうだろうね。でもあのときは、とにかく時間が惜しかったからな。それに一応、言づても頼んではおいたし、そう気を揉むことはないと思うよ。

【イサク】 お父さん。父さんはまだ母さんのことを、遠ざけてるんですか。

【アブラハム】 イサク、私がサラを遠ざけてるだなんて。どうして。

【イサク】 だってお母さんは、父さんの長男で、僕のお兄さんのイシュマエルを、その産みの母と一緒に荒野へと追い出したじゃありませんか。僕は父さんがそのことで悩んでいたのを、知ってるんです。

【アブラハム】 だが、息子よ、あれを追いやったのは私だよ。いくらおまえの母さんに頼まれたとはいえ、私には拒むことだってできたんだ。でも私はおまえの母さんの願いを聞き入れた。私はイシュマエルを愛していたけど、最後に決断してあの親子を追いやったのは、ほかでもないこの私なんだ。

【イサク】 でもそれだって、簡単なことじゃなかったでしょう?

【アブラハム】 うん。勿論だとも。簡単なことなんかじゃないよ。でも実はこれだって、主が私たちのために許してくれた判断なんだ。だから心配することはないんだよ。私たちが主のそばにいる限り、主は私たちのそばにいてくださる。

【イサク】 それじゃあ、兄さんたちは大丈夫なんですね。

【アブラハム】 ああ。主はそう言われた。父さんは主の言葉をかたく信じる。

【イサク】 よかった。

【アブラハム】 でもイサク、おまえはよく兄さんにからかわれてたじゃないか。おまえがそんなに兄さんのことを気にかけていただなんて、父さんは知らなかったよ。

【イサク】 無理もないことです。僕が兄さんと遊ぶのを嫌がってるって、きっとお父さんはお母さんから聞いたはずです。でも僕は兄さんのことが大好きでした。だから兄さんを嫌がってるというのは、本当は母さんだけの言い分だったんです。

【アブラハム】 そうだったのか。父さんはてっきり、おまえも嫌がってるものかと。

【イサク】 でも、それが神様の御心でしたら、いいんです。兄さんが元気なら、僕は大丈夫です。

【アブラハム】 すまなかったね、イサク。おまえの母さんが相手だと、父さんは頭が上がらなくて。

【イサク】 お母さんは決して悪い人じゃありませんが、でももっと神様を信じるべきだと僕は思います。

【アブラハム】 なんだ。母さんの信仰はまだ足りないとでも言うのかい。

【イサク】 ええ。そうです。だって、もし本当に心の底から神様を十分に信じているのなら、どうして意地悪な行いができるでしょうか。それは自分勝手な人でないとできませんが、人が自分勝手でいられるのは神様を畏れていないときに限られます。

【アブラハム】 そうかな。どうだろう。でも、イサク、おまえはもうこれ以上母さんのことを悪く言ってはいけないよ。おまえの母さんは、おまえを肉の姿でこの世へともたらし、守って、愛して育て上げてくれた、ほかならぬその人なんだからね。いいね?

【イサク】 はい、わかりました。もう二度と言いません。

【アブラハム】 それにおまえは、主を前にしてなお、自分は清く正しい、と言い張れるかな。

【イサク】 今はまだわかりませんが、そう言えるよう務めています。

【アブラハム】 務め続けるんだよ。いいね? というのも主を前にしては何人も自分は清く正しいなんて主張できはしないんだから。

【イサク】 わかりました。父さん。僕はさっき言ったことを恥じています。

【アブラハム】 じゃそろそろ先を急ごうか。ろばと若い衆もうしろで待たせていることだし。

【イサク】 一緒に連れてくればよかったんですよ。

【アブラハム】 それは主が禁じておられる。だから駄目なんだよ。

【イサク】 そうですか。なら仕方ないですね。

【アブラハム】 向こうに着いたらおまえは一休みしなさい。その間に私が礼拝の用意をしておくから。

【イサク】 お父さん、最後にもうひとつ、もう一度だけいいですか。

【アブラハム】 ああ。なんだね。

【イサク】 生け贄にする羊は、本当に見つかるのでしょうか。

【アブラハム】 なんだイサク、おまえは私たちの主を疑うのかい。

【イサク】 いいえ。とんでもないです。僕は主によって産まれたんです。僕はそのことを知らない馬鹿者じゃありません。僕は主のしもべです。

【アブラハム】 それじゃ息子よ、おまえはおまえの父であるこの私を疑っているのかい。

【イサク】 いいえ。僕はお父さんのしもべです。僕はお父さんを信じます。

【アブラハム】 いや、それじゃ駄目だよ。私は塵に過ぎない。なによりもまず主を信じなさい。あのお方だけが、私たちと違って永遠を知っていて、生きとし生けるものに息吹と死を与え、そしてまたこの世で果たされるべき正義とその裁きを司っているのだから。いいね?

【イサク】 はい。わかりました。僕は主を第一に信じます。

【アブラハム】 それじゃ、そろそろ参ろうかね。

【イサク】 はい。父さん。


──幕──



 アブラハムとその息子イサクは目的の地に着いた。イサクが父に言われて眠りに就くと、その間にアブラハムは彼の主である神ヤハウェのために祭壇を築いた。アブラハムは祭壇を築き終えると、未だ眠っている我が子をその壇の上に寝かせ、身動きが取れぬよう縄で縛り上げた。



第二幕 モリヤの地。山腹に築かれた祭壇。


 眠ったまま、石と薪でこしらえた壇の上に縛られているイサク。近くにアブラハムの火の器と荷物。

 イサク、やがて目を覚ます。


【イサク】 ん?(自分の体と周辺を見回して)父さん、父さん!──ねえ、どこなの?──父さん!


 舞台上手より、アブラハム、布切れと短刀を手にして登場。


【イサク】 父さん!

【アブラハム】 目を覚ましたか、イサク。

【イサク】 父さん、これはどういうことなの。僕を生け贄にするつもり?

【アブラハム】 ……そうだ。それが神の御意志なんだよ。

【イサク】 酷いよ、父さん。そんな。どうして。ああ。なんで言ってくれなかったの。ねえ。

【アブラハム】 言えばおまえは、きっと野うさぎのように、跳んで逃げていったじゃないか。わかってくれ、私の息子よ。こうするしかなかったんだ。

【イサク】 父さん。ああ。そういうことだったんだ。だから父さんは、母さんにも告げないで……

【アブラハム】 すまない。イサク。ごめんな。でも父さんはやらなければいけないんだ。本当はおまえにもわかって欲しかった。

【イサク】 なにをするの。やめて、父さん。ねえ!


 アブラハム、イサクの両目を布切れで覆い、うしろで縛る。


【イサク】 ああ──ああ……僕は死ぬんだ。僕は父さんのたったひとりの跡継ぎなのに、僕をこの世に引き入れた父さんの手で以て殺されるんだ。

【アブラハム】 喚かないでくれ、イサク。どうか頼む。父さんだって辛いんだ。誓って言うが、父さんがこれほどまでに苦悩していることは、未だかつてないんだ。今後これを超えるような悲しみが、父さんを襲うことだってないだろう。ああ、イサク、私の子供、父さんがどれだけおまえを愛してきたか、わかってるね? なあ、イサク、わかってるね?

【イサク】 ……うん。

【アブラハム】 ありがとう。ありがとう。私はおまえを愛しているよ。これからだって、私はおまえを愛し続ける。おまえは、どうかな、父さんを愛しているかな。こんな人間でも、愛してくれるかな。

【イサク】 ……うん。愛してるよ、父さん。

【アブラハム】 ああ。愛しい我が子、イサク。父さんはおまえを絶対に苦しませはしないから。決して痛みを感じさせはしないから。意図せぬ瞬きにも劣らぬ早さで、おまえを私たちの主のもとへと送り届けてあげるからな。そしておまえは父さんより一足先に、私たちの祖先に加えられて、これからも、主の祝福に抱かれて永遠の喜びに与るんだ。それに父さんだってすぐそこに行くし、だからなにも怖がることなんてないんだよ。いいね、イサク、私の息子。

【イサク】 わかった──わかったよ、父さん。

【アブラハム】 おまえ、それは本当かな?

【イサク】 うん。だってそれが神様の望みなんだもんね。僕、わかったよ。それに心の準備もできたんだ。やって、父さん。僕は平気だから。どうか母さんによろしく。それと兄さんにも。ああ。今までありがとう。父さん、僕は父さんの息子であれてよかったよ。(笑顔を見せる)

【アブラハム】 ありがとう、イサク、私の息子よ。いつまでも私たちの主が、おまえを至上の平安の内に留めておいてくださるだろう。


 アブラハム、短刀をイサクの喉仏に当てる。


【イサク】 さあ、やって。


 アブラハムはそのまま固まっている。


【イサク】 どうしたの。父さん、さあ!

【アブラハム】 すまない、イサク!

【イサク】 ああ、ああ!


 イサク、気を失う。アブラハムは一度短刀を下げる。しばしためらって、それから力強く振り上げる。その時、サラが舞台上手より登場。


【サラ】 待って! アブラハム、あなた。

【アブラハム】(振り上げた短刀を下げて)サラ、おまえ、どうしてここに。

【サラ】 天の御使いが、私のもとに現れたんです。そして事の次第をすべて話してくれました。私はあなたたちが出発したその日のうちに家を出て、あなたたちのあとを追ってきたんです。そしてようやく、私の愛する家族に会えました。

【アブラハム】 サラ、よしてくれ。こればっかりは仕方がないんだ。妻のおまえにだって、私を止めることはできない。私とおまえの唯一の子を、私は全焼の生け贄として主にささげなければいけないんだ。

【サラ】 その必要はありません。わからないんですか。もしあなたが、主のご命令によって私たちの子をその手で殺めなければならないとしたら、どうしてその同じ主が、ひとり息子を愛するこの私にそのことを告げたりしましょうか。

【アブラハム】 それはおまえもまた主の御心を知って、私に怒りを抱いたりしないようにするためだ。

【サラ】 いいえ、違います。神様はその子を私たちから奪いはしません。見てください。自分の息子を。素直な目で。どうですか。まだあなたはこの子を殺そうとなさいますか。

【アブラハム】 やめてくれ、サラ。やめるんだ。

【サラ】 この子は生きたがってます。あなたを愛してます。この世と、私たちの主を愛してます。どうして殺せますか。行ない正しきあなたに、どうして主がそんな惨たらしいことを要求しますでしょうか。

【アブラハム】 私は、自分が行い正しい人間だなんて思ったことは一度もない。

【サラ】 でもあなたがそうでなかったら、ほかに誰がそうであり得ましょうか。

【アブラハム】 これは他人と比べるような問題じゃないんだ。

【サラ】 それじゃ、なにをしたって言うんです。主の御心に適わないような不義を、あなたが働いたことがあったでしょうか。

【アブラハム】 罪は目に見えてわかる大きな出来事ばかりに張り付くんじゃない。それは生きた人間のあゆみの一歩一歩にすら宿るんだ。私はここに至るまでの旅の間、ずっとこの点ばかりを考え詰めてきた。振り返れば私にはもっと力を尽くして出来たことが沢山あったんだ。私の胎の中で、産まれる前に殺された善が何百とあったんだ。主が私たちに与えた息子を、今また主が私たちから取り上げなさるには、それだけでも十分な理由のように思えてならない。

【サラ】 いや、そんなことは、仕方のないことです。もしそうなら、我らが主の見そなわすこの世で長生きできる子供なんていません。人は滅びてしまいます。

【アブラハム】 まだわからないのか、サラ。これは私の問題なんだ。私と主の問題なんだ。

【サラ】 いいえ。それに加えて私と、イサクの問題です。あなたは息子のイサクを愛していないんですか。

【アブラハム】 私がイサクを愛していないかだって? どうしてそんなことを聞くんだ。

【サラ】 それは、あの子を愛してさえいれば、決して殺めたりは出来ないからです。アブラハム、今一度目を開いてください。そして自分の目の前で縛られている、私たちのかわいいイサクを見てください。

【アブラハム】 見ている。見ているとも! 私はイサクをほかの誰よりも愛している。そして私はすべてを承知の上で、今ここで愛しの我が子の喉仏に刃物を当てているんだ。私がどれだけの苦しみを背負ってここまで息子と歩みを共にしてきたと? 自分が捧げられるとも知らないで、この子はここまで私に従ってついてきたんだぞ。

【サラ】 ですから、もうやめにしましょう。ねえ。お願いです。イサクを手にかけるなんて、そんな必要はないんです。主のご命令というのも、恐らくはあなたの良心に耐えがたい葛藤をもたらすためのものです。ですからあなたが主を愛し、畏れ、讃えるがゆえに苦しめば、それで十分なんです。私はそう信じています。

【アブラハム】 じゃなんだ、サラ。おまえは私に主を試せというのか。

【サラ】 必要とあらば、試してください。

【アブラハム】 いいや。私は断じてそんなことはしない。私は、私たちの主を信じるだけだ。

【サラ】 ああ、アブラハム、あなたはなんて頑固な人なんでしょう。

【アブラハム】 いいや。私は主において常に正しくあろうとしている、それだけの土塊に過ぎない。

【サラ】 ああ。なら、もうなにを言っても無駄なんですね。やってください。でもどうかひと思いに。これだけ話してもわからないというのなら、どうすることもできやしません。念願の産みの苦しみに始まった私の苦労も、これでそのすべてが水の泡です。


 サラ、両手で目を覆って涙する。アブラハムは再度短刀を振り上げ、イサクの喉元めがけて振り下ろさんとする。その瞬間、天上から声。


【天使】 アブラハム。アブラハムよ。

【アブラハム】(手を止めて)はい。私ならここにおります。

【天使】 その子に手を下してはならない。あなたはその子になにもしてはいけない。わたしは今、あなたが神を畏れていることがよくわかった。アブラハム、あなたは自分の唯一の息子さえ惜しまなかった。

【アブラハム】 ああ。そうですか。はい。それでは私は、この刃を下げるとしましょう。私は愛する我が子に、なんの危害も加えません。

【サラ】 ああ、よかった! 神様! 私たちの主よ!(跪いて)ありがとうございます。感謝いたします……

【アブラハム】 しかし、これはなんということだ……なんということだ……

【サラ】(振り向き、舞台上手側を指さして)見てください、あなた。向こうに羊が。角が薮に引っかかっているみたいです。

【アブラハム】 ……ああ。本当だ。全能の神よ、私はあなたを讃えます。サラ、あの羊をここまで引っ張ってきてくれないか。ここでこの子の代わりに、私たちの主にささげるとしよう。

【サラ】 ええ。そうしましょう。ああ。主の御名が尊ばれますように。いつまでも、絶えることなく地の上に響き渡りますように!


 サラ、舞台上手側に退場。アブラハム、イサクの目隠しを取り、縛りを解く。顔を見つめ、頬を撫でる。イサク、目を覚ます。


【イサク】 父さん。

【アブラハム】 イサク。イサク。

【イサク】 僕は生きている……どいうことなの。ねえ。

【アブラハム】 私たちの主が、父さんがおまえを生かして、こののちも変わらず共にいることを許してくれた。神様がおまえを助けてくださったんだよ。それに、ほら、向こうには羊がいる。主が与えてくださったんだ。今におまえのお母さんがここまで引いてきてくれる。母さんはおまえのために、おまえを想って、私たちの後を追ってここまで来てくれたんだ。ああ、どうして主を褒め讃えないでいられるだろう。どうして主に感謝をささげないでいられるだろう。さあ、一緒に主を讃えて、私たちの心をひとつにしようじゃないか。

【イサク】 …………


 イサク、壇の上に横たわったまま父であるアブラハムに抱きつき、涙して体を震わす。


【アブラハム】 どうしたんだ、イサク、おまえ。

【イサク】 父さん、僕は怖かった……たまらなく怖かったんだ……

【アブラハム】(イサクを強く抱擁して)ごめんな、息子よ。おまえは立派だった。誰にもまして勇敢だった。

【イサク】 父さん……ああ、父さん!



──幕──